第3回:あなたの「アクセルとブレーキ」と「スクロール」はスムーズですか?
掲載日:2026.08.01
こんにちは。3番診察室の及川 欧(おう)です。おかげさまで、貸切状態だった診察室にも少しずつノックの音が聞こえるようになってきました。ありがとうございます。
さて、第3回のテーマは、神経内科の代表選手である「パーキンソン病」です。「脳の難病」「怖い病気」と身構えてしまう方が多いですが、これまでの「電気配線」の話の続きで言うなら、これは脳の中の「モーション制御アプリ」がバグを起こしている状態です。
■ 脳の中の「優秀な制御AI」
実は私、毎週木・金曜日は地元の東川町からここ江別まで、車を長距離運転して通勤しています。その道中、安全運転のために欠かせないのが車のスムーズな「アクセルとブレーキ」の操作です。
人間が身体を動かすときも全く同じで、脳からは「動け!」と信号が出ます。このとき、動きがギクシャクしないよう裏でスピードを自動調整してくれるのが「ドパミン」という物質です。自動車のアクセルとブレーキや、スマホやタブレットの滑らかな画面スクロールのようなものです。
パーキンソン病は、この制御システムの機能が低下し、身体の動きをスマートにコントロールできなくなる病気です。そのため、以下のような挙動が少しずつ現れます。
- 手足がジッとしているときに勝手にふるえる(安静時振戦:あんせいじしんせん)
- 歩こうとしても、一歩目が踏み出せない(すくみ足)
- 身体の関節や筋肉が硬くなり、突っ張る(筋固縮:きんこしゅく)
- 動作全体がスローモーションになる(寡動・無動:かどう・むどう)
- 方向転換や突然の動作の時にバランスが取りづらくなる(姿勢反射障害)
■ 「年のせい」という名の放置
実は、これらの症状は「もう年だから歩き方がトボトボしてきた」と、ご本人もご家族も見過ごしてしまうケースが非常に多いのです。単なる「老化」なのか、「制御システムのバグ」なのか。これを見極めるのが神経内科医の仕事です。
現在は医学が進歩し、お薬でスマートにシステムをアップデート(ドパミンを補充)できるようになりました。適切に対処すれば、驚くほど元のスムーズな動きを取り戻せます。
■ リハビリテーション治療との「連動」が最強
そして、お薬と同じくらい大切なのが「リハビリテーション治療」、つまり身体の再学習です。
私はリハビリテーション科の専門医でもあります。お薬で脳のシステムを安定させつつ、リハビリテーション診療で正しい動かし方をインプットしていく。この連動こそが最も効果を発揮します。 「最近、歩き方のテンポが遅いな」と思ったら、システムチェックのつもりで一度、3番診察室を覗いてみてください。早くバグを修正するほど、快適な毎日を長く維持できます。



